国語教育デジタルポートフォリオ

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「ごんぎつね」教材分析(1)ストーリー

「ごんぎつね」は、光村図書をはじめ、さまざまな教科書にとられている定番教材です。教材研究の歴史も長く、さまざまな文献がありますが、子どもたちには、「つぐない」のために、兵十のところに毎日くりや松たけを持って行ったごんが、最後には兵十に打たれてしまうというラストが、まず大きな驚きです。

そのため、(何より自分自身の救済のために)「ごんは、分かってもらえることを望んでいたのだから、わかってもらえてよかった」というような読みや「ごんのことも考えずにうつ兵十はひどい」というような読みが生じます。これらの読みは、誤読ではなく、テキスト自身がそのような読みを誘発するように書かれている、というのが、最近の教材分析の流れですが、私も大筋ではそれに賛同します。

 

まず、ストーリーは、「ごん」と「兵十」という2人の登場人物を中心に展開します。特に「ある秋のことでした」からは、ずっと「ごん」の目を通して場面が描写されます。それは「二」「三」「四」「五」まで続きます。読者は、「ごん」に同化しながら読むことになります。

 

それが「六」の「そのとき兵十は、ふと顔をあげました。」から唐突に「兵十」の視点に切り替わり、「兵十」の心内語「こないだうなぎをぬすみやがったあのごんぎつねめが、またいたずらをしに来たな」が挿入されます。そして、それは最後まで続きます。

 

この視点の転換により、これまで「ごん」に同化してきた読者は、宙づりになったような気分になり、それが前述したような読みを生じさせるのです。

なので、ストーリーを軸に授業を展開するのであれば、このことを意識して、「ごん」と「兵十」それぞれのストーリーを確認しておく必要があります。そのうえで、最後の場面での「ごん」や「兵十」の思いを押さえておくのがよいでしょう。