国語教育デジタルポートフォリオ

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「一つの花」なぜゆみ子は「かわいそう」なのか?

光村図書の4年教材「一つの花」(今西祐行)の授業を進めている。

今回の主発問は「父や母は、なぜゆみ子を『かわいそう』と言ったのか?」

考えさせると、子どもたちが注目するのは次の箇所

「なんてかわいそうな子でしょうね。一つだけちょうだいと言えば、なんでももらえると思っているのね」

次のような答えが返ってくる。

・ゆみ子が「一つだけちょうだい」という言葉を言っているから

・ゆみ子が、一つだけちょうだいと言えばなんでももらえると思ってるから

 

そこで、「なぜ~なのか」という問いの答え方について確認する。

(1)「なぜ、腹を立てたのか」というような気持ちを問う「なぜ」は、気持ちのきっかけとなる出来事を答える

→「横入りをされたから」「悪口を言いふらされたから」

(2)きっかけと気持ちがすんなり結びつかないときは「考え」も付け加える。

→「なにも答えないので無視されたと思ったから」

(3)「なぜ、涙を流したのか」というような行動を問う「なぜ」は気持ちを答える

→「くやしかったから」「腹が立ったから」「悲しくなったから」

(4)気持ちと行動がすんなり結びつかない時は「考え」で答える

→「無視されたと思い悲しかったから」

 

上の「一つだけちょうだいと言えば何でももらえると思ってる」というのは、本文中の言葉なので間違いではない。しかし、そのことがなぜ「かわいそう」という父や母の気持ちとつながるのか考えさせたい。

 

すると何人かの子どもは、次のように考える。

・ちょうだいと言えばなんでももらえると思うと、ゆみ子が将来なんでもほしがる子になってしまうから

これは「一つの花」あるあるだそうだが、子どもとしては合理的に考えているわけであるので、その意味では悪くない答えである。

ただし、作品の読みとして問題になるのは、父親の以下の発言と整合しないことである。

「この子は、一生、みんなちょうだい、山ほどちょうだいと言って両手を出すことも知らずにすごすかもしれないね」

父親は、むしろ我慢しないことを望んでいるわけなので、

・なんでも「一つだけちょうだい」ということで、将来なんでも我慢する子になってしまうことを心配しているから

というのが、こちらがわが期待する答えなわけだが、なかなか難しい。

とりあえず、「いったい、大きくなって、どんな子に育つだろう」というお父さんの心配はどうなったかな?」と聞き、その心配は杞憂に終わったことだけをおさえて、とりあえず授業は終えた。

ひょっとすると、ここは教師の読みを語る必要があるところかもしれない。