国語教育デジタルポートフォリオ

考えたこと、知り得たことをあれこれ記録

「アイスプラネット」

光村中2の教科書に載っている「アイスプラネット」(椎名誠)。

以前はいそうろうの「ぐうちゃん」(おじさん)の話を面白がっていたが、最近その話を「子供っぽい」「ばかばかしい」と感じ始めている「僕」。その話をうっかりクラスメイトにしてしまい「ありえねえ」と言われたことをきっかけに、「僕」は「ぐうちゃん」の部屋には行かなくなる。しかし、少し長い仕事から帰ってきた「ぐうちゃん」の部屋を久しぶりに訪れた「僕」は、「ぐうちゃん」から、いそうろうを卒業して旅に出ることを聞かされる。せっかく話を聞く気になった「僕」は、「ぐうちゃん」のいなくなった部屋の前で、「ほらばっかりだったじゃないか」と思う。しかし、しばらくして「ぐうちゃん」から届いた手紙で、「僕」は「ぐうちゃん」の話がほらではなかったことに気づく、という話。

最後の手紙で、それまでの読みが修正される(もちろん予想はつくが)ので、あらすじを1文でまとめることは難しい。構造としては、出会いの部分が省かれているが、日常とは違うものが訪れて去って行く「羽衣型」の物語になる。

「母」やクラスメイトに代表される『日常』からすれば、「ぐうちゃん」の見てきた世界は「ありえない」『非日常』の世界である。子供っぽい世界と言ってもいい。しかし、最後の手紙で、「ありえない」という言葉が、「ありえない」からウソなのでなく、「ありえない」ことに満ちているから世界は素晴らしのだと、巧みに変換されている。

これから「僕」がどちらの世界で生きていくのか、読者である自分たちは、どちらの世界で生きていくのか、母や父の「ぐうちゃん」との距離の取り方も含めて考えさせたい教材。