国語教育デジタルポートフォリオ

考えたこと、知り得たことをあれこれ記録

語彙力をつける

全国学力調査が始まったとき、勤務校の結果の分析を命じられた。
国語については、おおむね良好だが、語彙の力が弱かった。語彙の力といっても、漢字の書き取りなどは、むしろ良かった。私たちの実感でも、授業での辞書による意味調べなどは積極的に取り組んでいた。なんというか「やんちゃな」生徒も、これだけは熱心にやっていたくらいである。
勤務校で「語彙の力が弱い」というのは、文脈の中で多様な意味を表すような言葉の意味を理解すること、文脈に照らして、もっともふさわしい言葉を選び出すことが弱いということだった。
語彙の力の弱さの解決に取り組んだことの1つは、読書活動を進めること。学習状況調査を見ても、読書の習慣はついていなかった。朝読書の実施。学級文庫の設置。図書室の環境整備。国語を中心とした授業での読書をすすめる活動など。生徒アンケートにも読書に関する項目を入れ、チェックするようにした。その結果、数年で読書についての項目は、全国はもちろん福井県でも上位のものとなった。
語彙の力の弱さの解決に取り組んだことのもう一つは、語彙の力を高める教材の開発である。それは、1つは、語彙に注目した読みの授業。例えば、1年「にじの見える橋」(杉みき子)。まず、対義語に注目する。例えば、「もやもや」と「さばさば」。逆に、同じ言葉「足踏み」が最初と最後とで違う意味で使われていることにも目を向ける。その上で、「少年」という、「子供」と「大人」の中間を表す言葉にも注目する。
次に、語彙そのものについて考える授業。例えば、「辞書に新しく載る言葉を考える」。まず、辞書の古い版と新しい版とを比較する。どんな言葉が落ち、どんな言葉が入っているかを考える。「辞書に新しく載る言葉を考える」。次に、新語のうちから候補を選び、どれほど使われているかを調べるためにWebを、いつごろから使われているかを調べるためにコーパスを利用する。この活動を通して、その言葉の意味を用例を通して考えていく、あるいは、その言葉の意味が確定していく過程を辿る。
これらの語彙の力を高めることを意識した取り組みで、全国学力調査でも県学力調査でも、結果は上向いてきた。